2024.03.12
みかんのせん定体験をしました
- みかん・柑橘類
- 季節のおたより
- 果物
- 食材テロワール
有田川河口の箕島漁港から7km(車で約15分)上流の有田川左岸に位置する有田市千田地区に来ています。
有田川が流れる左右の山々には石垣で積まれた階段型のみかん畑が広がります。出荷量日本一の有田みかんの産地です。
今回、ご指導いただくのは、農家の6代目で「匠の技伝道師」※に認定されている佐原洋一さん。みかん栽培の重要な要素となるせん定の体験をさせていただき、おいしいみかんを生む秘訣をお聞きしました。
※「匠の技伝道師」:和歌山県が卓越した栽培技術を持つ農家の方を認定する制度
柑橘を栽培している農家は、春の柑橘の清見や伊予柑、ネーブルオレンジの収穫に忙しい時期ですが、みかん(温州みかん)は、4月頃には芽が出るので、新芽が出るまでにみかんのせん定を行います。
せん定をしなければ、枝が伸び放題となって、樹や園地全体の日当たりや風通しが悪くなってきますが、せん定をすることで、全体に日光が届きみかんの栄養状態が良好になっておいしいみかんになります。
また、みかんには一年おきに豊作の年(表年)と不作の年(裏年)が顕著に現れる「隔年結果」と呼ばれる生理現象がありますが、せん定は、豊作と不作の差を少しでもなくすための作業でもあります。
佐原さんに案内された石積みの段々畑は、勾配がありましたが、一段ごとの幅は思った以上に広くとられていて、整然と植えられたみかんの樹は、背の丈より少し低く整えられて、作業性がよく整備されていました。
体験させていただく樹は、収穫時期が11月中旬から12月下旬に収穫期を迎える中生(なかて)の品種で5年生とのことです。
せん定ポイント①
樹全体を眺めて、主枝と亜主枝、側枝を確認します。どの枝が主枝、亜主枝、側枝なのかは佐原さんに指示していただきました。
せん定ポイント②
主枝、亜主枝と競合する枝や、生長を妨げるような枝を切り戻します。競合する枝というのは、平行枝や交差枝、同年枝などです。これらを切ることで、残された枝は生長が促進されます。残された枝が生長する姿を描きながら整枝することが大切です。
特に、徒長枝(とちょうし)といって主枝の途中から、空に向かって勢いよく伸びる新しい枝や立枝は、実がつかないか、実が着いても味が悪く、浮皮になり易いため切り落とします。しかし、切り過ぎると、かえって徒長枝が増えることもあるようで、知識と経験が活かされます。
樹の内側にも日が当たるように間引きせん定をします。枝が詰まって風通しが悪い箇所は、害虫が住み着く原因となるだけでなく、作業性も悪くなるため、樹の内側の枝や重なって詰まった枝を除きます。下垂した枝も、果実がつくと重みでさらに下がるので切ります。枯れた枝も除きます。
せん定ポイント③
みかんは一年おきに豊作の年(表年)と不作の年(裏年)が顕著に現れる「隔年結果」をする作物です。
実のついた枝には、翌年は花芽が付かず、実の付かなかった枝には、花芽が付きます。花芽が多すぎても、少なすぎてもダメで、バランスが大事です。
そのため、表年と裏年ではせん定方法が変わります。
表年に当たる場合は、花芽の量を減らすせん定を、裏年にあたる場合は、少ない花芽を切らないように気を付けながら、花芽に栄養が行き渡るように枝を整理するらしいですが、ちょっとコツのいるところは、難しいですね。
このようにいくつかのポイントに気遣いながら、競合する枝や、内側の枝、重なって詰まった枝を除き、すっきりさせることができました。(ページ上部の写真参照)
今回は、みかん栽培の作業の一部を垣間見ることができました。栽培には、労働力に加えて、技術と経験が必要であることも。
せん定は、結実の量を調整し、日当たりや、風通しがよくなるようにして、1つ1つのみかんに栄養を行き渡らせるために重要な作業でした。
和歌山では、令和5年は裏年、令和6年は表年に当たります。
収穫する秋には美味しいみかんに出会えます。その日まで、施肥や消毒、摘果、水管理など、農家はすべて手作業で行っています。
「おいしいには理由がある」有田みかんの収穫する日を心待ちにしています。