2015年「みなべ・田辺の梅システム」が、世界農業遺産に認定されました。
梅の生産量日本一を支える生産システムの秘密を探ります!
世界農業遺産ってなに?
世界農業遺産(GIAHS)とは、社会や環境に適応しながら何世代にもわたり継承されてきた独自性のある伝統的な農林水産業と、それに密接に関わって育まれた文化、ランドスケープ及びシースケープ、農業生物多様性などが相互に関連して一体となった、世界的に重要な伝統的農林水産業を営む地域(農林水産業システム)であり、国際連合食糧農業機関(FAO)により認定されます。
インド、中国、スペインなど世界で22ヶ国62地域、日本では11地域が認定されています(令和4年1月現在)。
世界農業遺産
みなべ・田辺の梅システム ロゴ マーク
「みなべ・田辺の梅システム」の価値とは
和歌山県南部に位置する、「みなべ・田辺地域」は、人口がおよそ7万2千人(2020年)ほどの地域ですが、梅の生産量は約4万9千トン(2019)で、全国の生産量の55%以上を占める日本一の梅生産地として有名です。そこには、梅産業から広がる、様々な文化と景観、先人の知恵と工夫でつくられた、世界に誇るべき日本の農業システムが受け継がれていました。
世界農業遺産 「みなべ・田辺の梅システム」について
Q.「紀州備長炭」が山を守っている?
「紀州備長炭」はウバメガシ等のカシ類が原木です。この地域では、自生する原木を用いて400年以上前から製炭が行われてきました。1700年代に江戸へ運ばれた炭は、品質の良さから「紀州備長炭」と呼ばれ、珍重されるようになります。生産量の増加に伴い、原木林維持のため考案されたのが「択伐」という方法です。木の幹を伐採せず炭に適する太さの枝を必要な分だけ切り出し、幼い木を残して後継樹を育てます。この薪炭林管理技術は現在まで引き継がれており、山頂から山腹にかけた薪炭林で多様な樹木・植物が育ち、水源や生物多様性が守られています。
Q.梅とミツバチの密な関係とは?
南高梅をはじめ梅の多くは、自家不和合性と言い、同じ品種間の受粉では実らない植物です。実をならせるためには他の品種(受粉樹)を近くに植える必要があります。そこで大活躍するのがミツバチです。昔から薪炭林に生息するニホンミツバチは、広大な梅林の受粉を助けてくれる、梅の結実になくてはならない重要な助っ人。ミツバチ側にもメリットがあります。花の少ない早春でも花粉や蜜を得られ、女王蜂の産卵や働き蜂の活動を活発にさせることができます。梅とミツバチは持ちつ持たれつ、切っても切れない仲なのです。
Q.生産者と加工業者の連携とは?
平野が少なく、養分に乏しい土地が多いこの地域では、米などの収量が多くありませんでした。1600年ごろ、当時の紀州田辺領主の安藤直次が梅の栽培を奨励。土質や気候が適していたことや、良い品種が普及したことなどから、高品質な梅干しが生産されるようになります。やがて江戸でも評判になり、次第に栽培も拡大していきました。1900年ごろ、梅加工産業が発達するにつれ、生産農家は収穫した梅を一次加工し、梅加工業者に提供する現在のスタイルが確立されます。農家が塩漬けし、干した梅(白干梅)を原料に、梅加工業者によって「はちみつ梅」や「しそ漬け梅」などに加工され、さまざまなバリエーションの商品として販売されます。
Q.すべてをつなぐ生態系ってなに?
薪炭林の雑木林が山崩れを防いで、水源を守り、梅林に水分と栄養を補給しています。その下方には1800年ごろから盛んに作られてきたため池があり、水田と田畑に水を安定的に供給します。薪炭林と梅林にはハイタカやオオタカが生息し、サシバやハチクマが飛来します。山間のため池や里地の水田には、セトウチサンショウウオやアカハライモリなどの希少種も生息しています。自然も地域の人の暮らしも維持する400年前から続くこの営みは「持続可能な農業システム」として世界から評価されています。
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紀州備長炭
ウバメガシやアラカシ等のカシ類を原料に作られる固くて良質な白炭。和歌山県は日本有数の生産量を誇り、年間約1,100トンを生産しています。世界中で焼かれている木炭の中でも紀州備長炭の品質は特に秀逸とされており、国内外で高く評価されています。