和食文化や食の健康志向などで
近年注目される発酵食品。
和歌山県発祥のものや 県にゆかりのある"発酵食"をご紹介します。
発酵食品とは・・・
食品に微生物が増えることで食材が変化することで起こる"発酵"と"腐敗"。この違いは人体に有害かどうかで、人に有益な場合は発酵、有害な場合は腐敗と呼ばれます。発酵食品は、昔の人が「食品を長持ちさせたい」と色々試すうちに誕生したと考えられています。保存性が高いのはもちろん、原材料が微生物の力により分解・代謝され吸収されやすいアミノ酸や糖などにかわっているなど栄養価も高く、また風味や旨味が増すのも大きな特徴です。
わかやまの発酵食品
金山寺味噌(きんざんじみそ)
鎌倉時代建長元年(1249年)に宋(中国)に渡った法燈国師(覚心)が、径山寺で修行の際、習得した製法を日本に持ち帰り、西方寺(現興国寺-和歌山県日高郡由良町)で、保存食(常備菜)として造られていました。おいしくて滋養があることから周辺にその製法が伝えられ、広まっていきました。また熟成の際、にじみ出る上澄み液が美味だったことから醤油へと発展しました。江戸時代には徳川御三家紀州藩主、家康の子である頼宣の産業奨励以来、工業的に広く和歌山県内で醸造されるようになり、湯浅港近くの大仙堀周辺には百軒近い醸造所が立ち並んだといわれます。
通常、味噌は米か麦を麹にして、蒸した大豆と塩をあわせて発酵させますが、金山寺味噌は、米、麦、大豆をすべて麹にします。
大豆は皮を取って、割って、蒸して、冷やして、種麹とあわせます。夜に米を洗ってから、蒸し込み、冷やして麹を種付けし、48時間寝かせたのち、4日目の朝に野菜を入れて仕込みます。ウリ、ナス、ショウガ、シソなどの野菜を細かく切ってたっぷりいれるのが和歌山県の金山寺味噌の特徴です。夏場は2週間、夏以外は90日ぐらい寝かします。
「おかずみそ」なので、そのまま白ご飯にのせたり、和歌山の郷土料理の「茶粥」と併せるとおいしくいただけます。おにぎりの具や、生野菜、冷ややっこ、焼き魚などもおすすめです。最近では、クリームチーズと併せてお酒のつまみメニューで提供する飲食店もあります。
「紀州金山寺味噌」は、原料ほか製造工程、管理などの基準を設定し製造されている金山寺味噌です。「GI:地理的表示(Geographical Indication)保護制度」に和歌山県の産品として初めて登録されました。
醤油
和食に欠かせない、醤油。紀州藩の特別な保護をうけた江戸時代に、現在の湯浅町を中心に産業として発展しました。享保年間(1716~35)には製造技術が一層すすみ、藩外への販売量が拡大されたそう。醤油を江戸で販売しようと、千葉県の銚子で醸造を始める事業者もあり、江戸から醤油文化が全国に広がりました。
醤油は、甘味・酸味・塩味・苦味・うま味の5原味で奥深い味わいを生み出します。香り成分は300種類ほど含まれ、非常に複雑で、生臭さを消す役割を果たしたり、加熱した際の香ばしさを生み出します。醤油は色んな種類があります。食材にあった使い分けをし、旨味を引き出す、和食文化の一端を担っています。
「淡口(うすくち)醤油」は塩味が強めで、色が薄いのが特徴です。素材の色を生かしたいときに使用します。卵焼きやお浸しなど食材の色を際立たせたいときにおすすめです。「濃口(こいくち)醤油」は淡口に比べ塩味が少なく、色が濃い醤油です。食材の甘味を生かした料理、肉じゃがやきんぴらなどで使用することが多いです。さらに大豆などの原材料を多く使い、発酵期間を長くした、旨味が濃い「再仕込み醤油」や「溜(たまり)醤油」があります。お刺身などのつけ醤油や照り焼き料理に使われます。醤油を知ると和食をより楽しめます。
柿酢
ビタミン、カリウムが豊富な柿。その生産量は和歌山県が日本一を誇ります。
柿を長期間熟成させて造る柿酢は、まろやかな味と芳醇な香りが特徴です。柿酢の製造工程では、まるごとの柿を粉砕し、酵母菌によるアルコール発酵を1~2か月、酢酸菌による酢酸発酵を3~4か月行います。さらに発酵終了後に数年間の熟成期間を設けることで、柔らかく深みのある味を生み出しています。
日本酒
古くから「木の国」と呼ばれる和歌山県は、広大な森林が良質で豊かな水をもたらしてくれます。
和歌山県ではこの良質な水と、選りすぐりの米、麹、酵母、卓越した醸造技術によって様々な味わいの日本酒が製造されています。軟水で仕込んだ、口当たりが良く優しい味わいのお酒が比較的多く造られていますが、地域によっては中程度の硬水を使いフルーティーでキレのある味わいを楽しめるお酒も造っています。各蔵の造り方に材料、さらに気候や風土によって出来上がるお酒は多様であり、それらを含め各蔵の味となっています。
紀州のつけもの
和歌山県北部では、水はけの良い豊かな土壌に恵まれ、古くから大根が生産されてきました。
この地域で採れる大根は肉質が柔らかくみずみずしい歯ごたえがあり、和歌山の伝統的な漬物である「紀州べったら漬」や「紀の川漬」に欠かせない大根です。「紀州べったら漬」は大根の皮を剥き、米麹と砂糖で漬け込んだ、上品な甘さのつけものです。また、「紀の川漬」は大根の皮を剥かずにぬか床で漬け込んだ、あっさりとしたたくあん漬けです。どちらも関西地方で人気のある漬物です。
わかやまの発酵食品を食べて、健康で元気に。
おいしく食べて和歌山モールでは、県内の発酵食品を取り扱っております。
味噌・醤油
お酒・お酢・柿酢
漬物・その他
食品を発酵させる文化
なれずし
塩を入れ炊いた飯に、塩漬けしたサバやサンマなどの魚をのせ、アセや芭蕉の葉に包み、長期間熟成発酵させた和歌山の郷土料理です。
なれずしは、現代の寿司の原型と言われます。有田・日高地方では秋祭りのご馳走として作られ続けてきました。長期間発酵させたものを「本なれ」と呼び、その独特の風味はやみつきになります。
酢飯を使い数日の短い期間で作る「早なれ」は和歌山ラーメンの店でよく見かけ、ラーメンと一緒に食べるのが地元で人気の食べ方です。
かつおぶし
燻製によるかつおぶしの製法は、江戸時代に紀州印南町出身の角屋甚太郎によって初めて開発されたと伝えられています。
和歌山県では春から秋にかけて、黒潮にのって回遊してくる鰹が大量に釣れるため、保存のために煮て乾かしていましたが、腐りやすいという欠点がありました。甚太郎の開発した「燻乾法」では、鰹を蒸して骨抜きし、乾燥と燻す作業を繰り返し、その後、カビ付けして天日干しします。鰹の水分を抜き取り、カビを使うことで長期保存を可能にした「燻乾法」は、江戸時代においては革新的な技術でした。