梅干しをとことん愉しむ
「すっぱい」イメージが強い、梅干し。近年は、はちみつ梅などの食べやすい加工など、バラエティーに富んだ梅干しも販売されています。梅干しを知り尽くした、立ち喰い梅干し屋の竹内順平さんにそれぞれの特徴と意外な食べ方を聞いてみました。
竹内順平（たけうち じゅんぺい）
PRODUCER
1989年生まれ。
伝えるを「粋」にプロデュースする「BambooCut」（株式会社バンブーカット）の代表取締役。梅干しの魅力に惹かれ、全国300種類以上の梅干しを食べ、「にっぽんの梅干し展」などのイベントを企画し、日本各地やフランスでも開催。2020年３月には東京ソラマチに「立ち喰い梅干し屋」をオープン。2022年6月には浅草に梅干しと羽釜ごはんとお供のお店「梅と星」をオープン。おいしいお守り「備え梅」や、選べる梅干し「ウメボシカルタ」、梅干しづくりキット「梅子」などの商品開発も手がける。
塩だけを使って作る、元祖・梅干し
塩のみを使って漬け込んだ、昔ながらのしょっぱい梅干し。その歴史は非常に古く、900年代に編纂された日本最古の医学書「医心方」に梅干しの効能が登場しています。作り方は、梅を塩漬けにした後、天日干しするというシンプルな方法。はちみつ梅やかつお梅などの調味梅干しも、白干しがベースになっています。
おにぎりやご飯のお供として欠かせない梅干し。酸っぱすぎる梅干しが苦手であれば、塩抜きしてやさしい味わいにしてもいいでしょう。アレンジする場合は、とんかつや豚汁などと合わせるのもおすすめです。梅干しは、油ものとの相性が抜群。醤油やお酢といった調味料と同じように考えてぜひ活用してみてください。
鮮やかな赤と清涼感ある風味
1700年代、江戸時代になると、貴族の食べ物であった梅干しが、庶民にも親しまれるようになります。赤い色のしそ漬けの梅干しが生まれたのもこの頃です。白干しに赤しそを漬けこんで、鮮やかな赤色としその風味をつけます。真っ白なご飯に赤い梅干しを載せた「日の丸弁当」があるように、今では梅干しといえばしそ漬けというイメージが定着しています。
梅干しを使って酸味とコクをプラスする魚の梅煮がおすすめ。魚特有の臭みが強い青魚などは、梅干しと一緒に煮るとその匂いが軽減されるため、昔からの知恵として料理に活用されてきました。煮込むことによって梅の酸味が和らぎ、やさしい味わいに。爽やかなおいしさが魅力です。
とろりと甘くて食べやすいはちみつ梅
白干しにはちみつを加えて甘くしたはちみつ漬けの梅干しは、1980年代前後に流通するようになった新しい味わい。甘いものではスイーツ感覚で食べることができ、子どもから大人まで人気の種類です。はちみつ漬けには、ふっくらと肉厚で皮が薄く、梅の実自体に甘みのある南高梅が相性バツグンです。
おすすめしたいのは、はちみつ梅と鰻の組み合わせ。「梅干しと鰻の食べ合わせは悪い」といわれてきましたが、この通説に医学的根拠はなく、実は相性ばっちり。特にはちみつ梅は、絶妙な甘酸っぱさが香ばしい鰻のアクセントになります。ハモに梅肉を合わせるようなイメージで、さっぱりとバランスの良いおいしさです。
日本の伝統食品の掛け合わせ
1000年以上の歴史を持つ梅干しと、同じく伝統的な食品であるかつお節を合わせた梅干し。旨味と酸味、豊かな風味が一粒に凝縮されています。白干しを塩抜きして、鰹節をもみ込んで作るというのが一般的。かつお梅が登場したのは、昭和50年代前後といわれています。現在かつお梅は、甘味のあるものが主流になっています。
白干しなどと比べて塩味が少ないかつお梅。しょっぱい梅干しが苦手という人や小さい子どもにもおすすめです。そのままご飯のお供として食べるのはもちろん、さまざまな料理の調味料としても活躍します。かつお梅は、実はマヨネーズとの相性が抜群。まろやかでやみつきになる味わいです。
ユニークな組み合わせに驚き！オリーブオイル漬け梅なども。
現在、梅干しの種類は多種多様。昆布梅や、ゆず梅、もも梅など他のフルーツと合わせたもの、メープルシロップ漬けなど、和洋に関わらず幅広い商品が登場しています。そんな多彩でユニークな梅干しの中でも特に驚いたのは、オリーブオイルに漬け込んだ梅干し。風味がよく、多彩な食材や料理との相性がいいんです。
オリーブオイル漬け梅は、和食の代表である梅干しが一気に洋風に。梅干しの爽やかさとオリーブオイルのコクとまろやかさが絶妙。刻んでサラダのドレッシングに使ったり、パンとチーズと合わせたり、パスタと和えたり…。使い方は自由自在。調味料として常備しておけば、料理の幅が広がります。
梅干しと一口に言っても、種類が本当にたくさんあるんです。私もこれまでたくさんの梅干しに出会ってきましたが、オリーブオイル漬けに出会ったとき、まだまだいろいろなポテンシャルがあることに気付いて驚きました。梅干しとしてはもちろん、アレンジや料理の味付けに使ったりと、多彩に楽しめます。皆さんもぜひ、色んな梅干しとの出会いを愉しんでみてください。
梅干しや梅に関連する
情報をご紹介します。
災害時の食事は炭水化物がメインで栄養が偏りがちになります。
そんなとき、昔ながらの保存食、梅干しが役に立ちます。
梅干しは塩類の補充ができて、クエン酸が体の調子を整えます。
お弁当に梅干しをいれるように、殺菌効果があり腐食の抑制を期待できます。
いざという時に役立つ梅干し。ローリングストックの一つとして、常備してみてはいかがでしょうか。
7月30日は和歌山県日高郡みなべ町の東農園が2004年に制定した記念日「梅干しの日」。
梅干しは「食べると難が去る」と言われていたことから、「難（7）が去る(30)」という語呂合わせで制定したそうです。
梅ポリフェノール、梅干しの新型コロナウイルスに対する効果が発表されました！
〇紀州田辺うめ振興協議会(田辺市・JA紀南) 発表」（令和４年３月15日）
※「梅干しの新型コロナウイルス（SARS-CoV-2）への効果検証（研究報告）
（リンク：https://www.tanabe-ume.jp/utility_and_functionality/kenkyu2021/）
〇みなべ町うめ課 発表（令和４年６月１日）
※「梅ポリフェノールが新型コロナウイルスに対して阻害効果を持つことが明らかに」
（リンク：http://www.town.minabe.lg.jp/docs/2022052800016/）
このほか、インフルエンザウイルスの増殖抑制やヘリコバクターピロリ菌の運動阻害などの効果も発表されています。
